夏!無農薬的芝居づくり!

妻鹿達也(こどもの館劇団員、教員)

2003年8月11日
兵庫県立こどもの館の「こどもの館劇団」では、中高生の参加者と同じくらいの人数の学校教育関係者が作品作りに参加しています。 学校の先生が演劇作りに加わるというと、ある種の固定化されたイメージがあるかもしれませんね。

 しかし、大人が子どもに怒鳴られることも頻繁にあるこの現場。 こどもの館劇団一の演技派・メガさんが劇団に関わるこのスタンスを文章から、ぜひ感じてください (文中の「ギーノ」とは、演劇百貨店の柏木店長を指します)。

 

元気になるテレビという番組が昔あった。 メインキャスターの人気も手伝って、けっこうな視聴率だったと思う。 確かに元気という言葉は何よりもここちよい。 元気のないニュ-スばかりが流れるこの頃だからこそ、元気を人々は欲している。

元気は健康という言葉と置き換えてもいいかもしれない。 健康になるためにサプリメントと称する錠剤がコンビニエンスストアにまで置かれるようになった。 それほど、人々は健康を欲している。 健康な体は笑いから生まれると聞いたことがある。 笑う門には幸福もやってくる。 漫才や落語が長い間人々に受け入れられ続けているのも笑いの絶えない日々を人々が欲しているからだ。

私はこの全てをこの三日間で手に入れた。 いや正確に言うと手に入れ続けている。 職業柄ストレスが私の一番の敵になっている。 しかも、相手は生き物だ。 約三十才も年下のその生き物に私は日々悩まされ続けている。 おそらくこれからも悩まされ続けるだろう。 ところがこの館に集う同じ年頃の生き物たちに私はストレスを全く感じない。 それはどうしてか。 さかいすすむ的にいうと「なあんでか?」

もう一度言うが私は「元気」「健康」「笑い」というストレスとは全く無縁のこの全てをこの三日間で手に入れた。 もう一度正確に言うと手に入れ続けている。 「ギーノ」と名乗る異星人と思しき存在に導かれ、この地上の楽園で流れていく時間は何物にも代え難い至福の時である。 だからなのか…。

ここは地上の楽園! 先ほどの自分自身の質問に対する答えはここにあるような気がする。 環境が違うのだ。 いわゆる人的環境が違うのだ。 そこには世間で言うところの縦社会は存在しない。 肩書きも存在しない。 少し、詩的に言うと仮面も鎧もつける必要がない。 あるのは互いのニックネームのみ。 あとは、個人的趣味を満足させる数々の演劇的試み。

くどいようだが私は元気であり、健康であり、笑いの絶えないこの空間をこの三日間で手に入れた。 くどいようだが正確に言うと手に入れ続けている。 まず脚本ありきの従来の芝居づくりではなく、まず人ありきなのだ。

そこでは、灰皿も飛んでこない。 もちろん怒声もない。 学生時代に体験した暗くせつないアンダ-グラウンドな練習場所ではなく、晴れた日には太陽が降り注ぎ、雨の日には窓を濡らしこぼれ落ちる雨粒が見える練習場所である。 しかも、本番は野外!  これほどナチュラルな芝居づくりがあるだろうか。

だからこそ、私はこれからも元気になっていき、健康であり続け、笑い続けることができるのだと思う。