「こどもの館」という不思議な空間

吉原千左加(大学生)

2003年8月27日

兵庫県立こどもの館(姫路市)の「こどもの館劇団」には、大勢の子どもと一緒に、大勢の大人たちがやってきます。 一概に「大人」といっても、その立場はさまざま。 子どもに対して一方的に指導するわけではなく、子どもも大人も一緒になって、この場所でいろんなことを感じ、考えていくようです。

ちーちゃん、こと吉原さんは卒業論文のテーマにするため「こどもの館劇団」に初参加した変り種の参加者です。 作品『ペラペラオペラ』の中で、いんちき商店『ペラ屋』の若い継母役として、背中に大きな羽をつけたまま舞台を駆け回った彼女(何だそりゃ。本人考案)の目を通して、こどもの館という空間をイメージしてみてください。

こどもの館劇団へは初参加で、極度の人見知りと恥ずかしがり屋を兼ね備えた私には、自分の意見を伝えることが出来なかった。 繰り返されるミーティングの中で「普通」を求めるような意見に、舞台上にも「普通」が必要なのか?と思いながらも、自分の意見なんて演劇経験者には参考にならないだろう…などと、自分の中に閉じ込めて逃げていたのだ。 言うまでもなく、自分の納得できるようなものが出来るはずはなかった。

反対に子どもたちを加えての話し合いでは、子どもたちからの意見の出なさに困ってしまった。 しかし、大人から少し提案を出し動き始めることにすると、子どもたちの創造領域が活動し始め止まらない。 吸収力の強い子どもたちには、話を広げていけるようにもっていく大人が必要で、一緒になって考えていくことが大人の役割となるそうだ。 そうすることによって答えは1つではないことに気付き、自分を表現でき、個々の思いが表現を広げていけるのだろう。

そんな中、初参加で分からないこともあり、不安でいっぱいの私は、今まで何度もこどもの館劇団に参加している人に、分からないことは聞いていた。 すると、「どっちでもいんじゃない!?」という答えが返ってきたときは、私をより不安にした。 大人組みであった私にも不安だらけで、一緒に考えてくれる人が欲しかったのだよ、、、。

そんなこんなで本番当日。 1日目は、セリフを覚えなくては、間違えないようにしなくてはと思うばかりで、舞台を楽しむことが出来なかったように思える。 それは、お客さんにも伝わってしまい、見ている人も楽しむことが出来なかったのではないかと反省し、明日はめいっぱい楽しもうと思うことにした。

2日目はみんなの願い届かず雨となり、屋内で行うことになって、前日は見守ってくれていた空や木々に、昨日より成長したみんなの力を見せることが出来なかったのは残念だった。 しかし、屋内なりにイイものになったと思う。

それは、自分の中での変化があったからだ。 前日での反省もあり、間違ってもイイ、楽しめれば、楽しんでもらえればと思うことで、リラックスして望めたことは大きな成長であったと思う。 リラックス出来たとはいえ、緊張しなかったというわけではない。 緊張していると気付いているなら、まだ心に余裕がある思うこと、自分は本番に強いと信じることで、舞台全体の空間と雰囲気を楽しむことが出来たのだ。

技術的に上手く出来るなら出来るほどイイことはない。 けれど、上手く出来ること以上に、自分が楽しむこと、楽しませることの方が大切であると思えた。 これこそが、こどもの館劇団であるのだろう。

WS風景

みんなの中へ溶け込むことが出来るだろうかと心配しながらの参加。 しかし、そんなことは心配するようなことではなかった。 日々の楽しいゲームや話し合いで、いつの間にか溶け込めていた。

意見を言えなかったのも最初だけ。 悩んだり、落ち込んだり、焦ったりしながらも本番をむかえることが出来たのは、みんなに不安を聞いてもらうことで落ち着けたからだ。 とくに、劇団を指導した柏木さんは、私の話を聞いたあと「まだ大丈夫とまでは言えんけど」と言葉を残してくれた。 「がんばらなくてはいけないんだった!」と思い直すことができ、大丈夫というような安心させる言葉を待っていただろう自分には、衝撃的な言葉となった。

予定外、予想外なんて当たり前。 それがどうなるかは分からないけれど、良いほうへ向かうことが出来たなら儲けもん。 それは、役柄、出演、雨…と多々の変更は、思いもよらないトコで笑ってもらえたり、思いもよらないコトが新しい発見、新鮮な見え方へとつながっていくのです。 新しい自分への大発見ともなりました。

人と話すことが苦手で、間違えることを恐れ、人前に出ること目立つことを避けていた自分が、本番2日間を終えて、間違いを失敗とは思わずに、新しいことへ挑戦した自分に気付けるようになるとは驚くほど大成長です。 こどもの館という不思議な空間に出会えたことに喜びを感じます。

18日間は、失敗しつつも大成功です。 最後に笑えて終われたことが、何より良かったと思います。 本当にありがとうございました。 感謝です。

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