2006年5月〜7月

『子どものための演劇あそびの時間』とは?
5月~7月にかけて、世田谷区にある烏山杉の子保育園で、演劇あそびを行いました。 一緒に遊んだのは、くじらグループ(5・6歳児)のおともだち。 進行役は、けいちゃん(南波圭)、くーちゃん(青山公美嘉)、さんちゃん(大西由紀子)です。 ここに紹介するあそびは、どれも簡単なものばかり。 だけど、子どもたちが普段の生活の中であそびかたやイメージを広げて楽しめるように、工夫を凝らしました。 午前中の1時間をつかって、全8回で飛び出したあそびの数々と子どもたちの様子をレポートしていきます。

進行:大西由紀子、南波圭

進行助手:青山公美嘉

協力:社会福祉法人杉の子保育会/烏山杉の子保育園

 

子どものための演劇あそびの時間(1)
「外で元気に演劇しよう!」

日時:5月24日・30日

5月の晴れた朝、くじらグループ(5・6歳児)の子どもたちと初めて出会いました。 これから一緒に演劇であそぶ仲間たち。どんな時間が待っているか楽しみです。 今回は屋外で元気に遊んだ様子をレポートします。

★だるまさんがころんだ

「だるまさんがころんだ」は子どもなら誰でも知っている遊び。 オニが振り向いた時に動いていたらアウト。 そんな単純な遊びにルールを追加していきます。 演劇百貨店の「だるまさん」は、いつでも好きな時に、無言で振り向きます。 ふだんあそび慣れて得意だけれど、いつオニが振り向くかわからないからみんな真剣。

ルールその1:2人組で止まる

オニが振り向いたらそばにいる誰かとくっついて止まります。 一人でいるのがオニに見つかったら、スタートに戻されてしまう厳しいルール。 また、次に組む時は別の2人組にならないといけないから、もう大変。

ルールその2:片足を上げて止まる

今度はもっと難しくなりました。 誰かとくっついて、片足を上げて止まらないといけません。 たくさんの人とくっついてもいいけど、やっぱり次は別の人とくっつきます。みんな必死で新しいパートナーを探します。 足を上げてたくさん連なった姿は山脈みたい。

だるまさんがころんだ1 だるまさんがころんだ2

ルール3:○○がころんだ

無言だったオニが、今度は喋ります。 オニに「ネコがころんだ!」と言われたら、ネコになって止まらなくてはいけません。 最後にオニにタッチしたら、オニの指定したものになって戻ります。 「カマキリ」「ライオン」「自転車」「鉛筆」「椅子」など、いろんなものや動物が飛び出します。 そのたびにたくさんのカマキリや自転車が生まれます。 「○○くんのカマキリ、おもしろい!」「○○ちゃんのもなんだかおしゃれ!」ともだちの姿を見て、自分もうよいところを真似してみたり、鳴き声を出してみたり。 中には見たことがない動物も出てきます。 「ナマケモノがころんだ!」 「ナマケモノ」ってなんだっけ?と迷ってる暇はありません。 自分が「ナマケモノ」と思ったら、それは立派な「ナマケモノ」。 ひとつの正解がないのが面白いところ。そしてそれが演劇の入り口につながるのです。

 

子どものための演劇あそびの時間(2)
「絵本から演劇つくろう!」

日時:6月16日

演劇あそびの時間は3回目。 今回は絵本に出てくる擬音語・擬態語をつかってあそびます。

★ことばに合わせてダンス

「もこもこもこ」という絵本を読みました。 この絵本、「もこ」「にょき」「ぱく」などの言葉だけで、ストーリーはありません。 でもみんな大好きな絵本です。 この本の、みんなのお気に入りの音ってなに? 絵本から、好きなことば・音を取り出してみます。 「ギラギラ」「にょきにょき」「ぱちん」! これらの音に、みんなで考えた動きをつけてみます。

ことばに合わせてダンス1 ことばに合わせてダンス2

「『ぱちん』って、動きにするとどんな感じ?」 「う~っ」と集まってから、みんなで広がって「ぱちん」とジャンプ! 動きに合わせて新しい音が自然とついてきます。 「にょきにょき」からは動きが2つできました。 土の中から出てきたり、左右に揺れたり。 輪になって、出てきた動きを全部つなげると、まるでダンスみたいになりました。 みんなで動くと、楽しい!

★飛び出す絵本

絵本の中に、1シーンだけ、ことばや音が書かれていないページがあります。 ここに音をつけるとしたら、どんな音? 「しゅわしゅわーん」「にょわーん」いろんな音が出てきました。 じゃあその音に、動きをつけるとどうなる? 3,4人のグループごとに、音と動きを考えてみます。 ぐるぐる回ってジャンプしたり、手をつないでしゃがんだり寝転んだり。 「できた!」それぞれのグループがつくったシーンの小さな発表会を行います。 ひとつのページをヒントにして、たくさんの音と動きが表れました。

飛び出す絵本

最後に、今までつくった音や動きを盛り込んで、みんなで絵本を読んでいきます。 絵本の世界から飛び出してきたような、楽しい時間になりました。

参考にした絵本:谷川俊太郎作「もこもこもこ」(文研出版)

 

子どものための演劇あそびの時間(3)
「音を見る・聴く・あそぶ」

日時:6月19日・29日

 

4回目と5回目のテーマは「音」。 ふだん聴いてる音はどんな音? 音に耳を傾けたり、言葉にしてみたり、からだで表現してみたら、なにか面白いあそびが生まれるかもしれません。 今回は身の回りの音をつかって遊びました。

★ペットボトルで音探し

「今日はみんなにプレゼントがあるよ!」配られたのは、からっぽのペットボトルたち。これからどんな音が生まれるの?

ことばに合わせてダンス1

部屋の中にあるものを触ったり叩いたりして、お気に入りの音を探します。 太鼓のバチでこすったり、積み木を叩いてみたり、泡だて器をつかったり。 そのうちにペットボトルの中におはじきや水を入れる子が出てきました。 それぞれが工夫して「ペットボトル楽器」をつくり、面白い音・楽しい音・心地よい音を探します。

ことばに合わせてダンス1

晴れていたので屋上で音探しをしました。 たっぷり音を探してあそんだら、今度は進行役のけいちゃんが、音の出るものをたくさん持ってきました。 ピンチハンガー、シャンプーボトル、ビニール袋など、どれも家にあるものばかり。

ことばに合わせてダンス1

「これ、なんの音に聴こえる?」 ビニールをくしゃくしゃに丸めたり、ピンチハンガーを揺らしたり。 「雨の音」「嵐の音」「雲の中の音」。 耳を澄ますと、すてきな音が聴こえてきます。

★食べる音あそび

「あなたの好きな食べ物は?」ぽくぽく太鼓を叩いてチーンと鳴らしたら、リズムに合わせて答えます。 「りんご!」「じゃあ、りんごを食べる音は?」「しゃくしゃく」「ぱくぱく」「もぐもぐ」みんなで食べるしぐさをしながら、音を出していきます。 「カレーライスを食べる音は?」どんどん質問に答えていきます。「テレビを食べる音は?」 あれ?食べ物じゃないぞ?でも、もし食べたらこんな音が出るのかも?「ガチャガチャ」「ぐわりぐわり」。 そうかも、そんな音がするかも! 食べれないけれど、食べてみる。不思議な感じ。

★音のリモコン

「ここにくーちゃん人形があります。みんなの出した音に合わせて動くよ」 進行役の一人・くーちゃんが人形に扮して、音に反応して動きます。 「ピピピ」「ガーガー」「じゅわーん」「ぐちゃぐちゃ」 音を出すのは得意なので、たくさんの音が飛び出します。でもみんながいっぺんに音を出すと、くーちゃんは混乱してしまいます。 一人ずつ、音をきちんと届けてあげることが成功の秘訣。 最後に、今度はくーちゃんの出した音に合わせて、みんなで人形になって動いてみました。 「カリカリカリ」「くーるんくーるん」。それぞれ違う動きになって面白い。音とともだちになれたかな?

 

子どものための演劇あそびの時間(4)
「おばけやしきへようこそ!【前編】」

日時:6月29日・7月14日

あついあつい夏がやってきました。 夏といえば、そう、おばけの季節。 みんなと会うのも、いよいよ6回目。 みんなでおばけとあそぶ時間のはじまりです。

★おばけの帽子をつくろう!

イギリスの絵本「ガチャガチャゆうれい」を読みました。 寂しがりやのゆうれい・ガチャックが、ともだちを求めて楽しい仲間と出会ってゆくお話。 おばけの話は怖いけれど、みんな興味津々。 「みんな、すごいことに気がついたよ!」 なんと、お話に出てくるおばけはみんな帽子をかぶっています。 「みんなでおばけの帽子をつくってみない?」

テーブルには、色とりどりの布や折り紙、ラメ入りのペンや糸・リボンを並べました。 たくさんの素材とクレヨンをつかって、A3の画用紙いっぱいをつかって帽子を作ります。 描いても結んでもちぎっても、何をしてもOK!

おばけの帽子をつくろう!

白い画用紙の上に、絵とも文字ともつかない個性的な世界が広がっていきます。 世界にひとつの、自分だけの帽子を被ってみんなごきげん。

★おばけになってあそぼう!

「おばけの住んでるところってどんなとこ?」おばけのいる世界を楽しむために、イメージを膨らまします。 くーちゃんのもつスケッチブックに、みんなで少しずつ書き足しながら、おばけの住むお屋敷を描きました。

おばけになってあそぼう!1

このお屋敷の名前は、「ガシャックぼろ目やしき」に決定。 「もじゃもじゃこうもり」がペットとして一緒に住んでいます。 そして、みんなのおばけの国での名前も考えました。 「さくら」「キラリ」「ダークゴースト」・・・好きな名前をつけていきます。 さあ、これで準備はOK!

おばけの一人・「アクゴースト」が、かっこいいポーズで座りました。 「よし!それを集合のポーズにしよう。みんな、集合!」号令がかかると、みんな一斉に集合のポーズで座ります。

「今日の晩ご飯は、大好物のみみずだよ!」 みんなで手に乗せて食べるしぐさ。なんだかみんなおいしそう。

となりの国から、おばけの「さくちゃん」(進行役のさんちゃん)が遊びにきました。 みんな「うおーっ」「ごぉー」と手を大きく広げてご挨拶。

「いいご挨拶だ。じゃあみんなこれはできるか?」 くーちゃんおばけが「パン!」と手を叩くとみんなも「パン!」。 鳥のようなポーズをするとみんなも真似してあそびます。こんなのカンタン。

おばけになってあそぼう!2

最後に、「さくちゃん」からみんなへゴキブリをプレゼント。 ところで、おばけって他に何を食べるんだろう? 「ホコリを食べるんだよ」「虹を食べるの」 楽しいおばけたちの世界ができました。

参考にした絵本:マイケル・コールマン作『ガチャガチャゆうれい』(ほるぷ出版)

子どものための演劇あそびの時間(5)
「おばけやしきへようこそ!【後編】」

日時:7月25日

7月25日。この日で、みんなとあそぶのも最後です。 前の週にあったお泊り保育には、なんとお化けがやってきたらしく、みんなでつくったおばけの帽子をお守りにして、怖いのを追い払ったみたい。 そのせいか、子どもたちの様子もひと回り成長した感じ。 それでは、最後にめいっぱい楽しもう!

★ぼろ目やしきの入り口をつくろう

この前スケッチした、「ガチャックぼろ目やしき」には、何かが足りません。 そう、それは入り口。 実は、ぼろ目やしきには窓や目や手がついているのに、肝心のドアがなかったのです。

じゃあ、みんなが入れるように、ドアを作っちゃおう!

模造紙を広げて、クレヨンをつかって、思い思いのドアの絵を所狭しと描いていきます。 みんなはもう熱中。 鍵のついたカラフルなドアや、昆虫型のロボットみたいなドア。 他の子のドアとつながりあっているドアもあります。 まるでエネルギーがはちきれそうなドアも!

ぼろ目やしきの入り口をつくろう1 ぼろ目やしきの入り口をつくろう2

絵が完成したら、壁に貼りました。 さあ、これがぼろ目やしきの入り口です。 そこで何が行われるのか?

★おばけの晩餐会

「みなさま、ようこそおいでいただきました。さあ帽子を身に着けて、ハンドバッグをもってお入りください」

おばけの晩餐会1

なんとみんなは、おばけの晩餐会に招待されたのでした。 おそるおそるテーブルにつくと、そこには真っ白なテーブルクロス(模造紙)がかけられました。

「本日は、究極のお料理をご用意しました。今から、お皿とグラスをお配りいたします」テーブルクロスに、空のお皿とグラスが描かれました。 「みなさま、お好きなお料理をご注文ください!」

おばけの晩餐会2

みんなクレヨンを手に、お皿を埋め尽くしていきます。おいしそうなお料理、と思ったら・・・。

「クモ入りりんごジュース」「ヘビのから揚げ」「みみずのアスパラ」! さすがはおばけの晩餐会。 きっと、おばけが大好きな料理ばかりです。 みんなの描いたお料理を、一人ずつ発表していきます。 こうもりの目、亀の甲羅、虹色のワインやデザート。 材料ははちゃめちゃだけど、どれも本当においしそうで、みんなわくわく。 早く食べよう!

「いただきます!」どれから食べるか迷いそう。でもすてきな晩餐会も、まもなく夜明けのお時間が近づいてきました。

「大変!夜が明けるよ。では、扉を開けてお帰りください。おばけから人間に戻りましょう」 名残惜しいけれど、おばけの晩餐会は、おしまい。そして私たちとの演劇あそびの時間もおしまいです。

おばけの帽子をつくったり、音をたくさん探したり、みんなでくっついて止まったり動いたり。 どんなことが楽しかっただろう? どんなことが嬉しかっただろう? ともだちのいいところや、自分の好きなところは見つかったかな。 たくさんあそんできたことの中から自分の好きなものを探して、これからもあそんでね。

 

 

進行:大西由紀子、南波圭

進行助手:青山公美嘉

協力:社会福祉法人杉の子保育会/烏山杉の子保育園